以前にもブログで書きましたように、アトロピン点眼で近視進行予防効果があることがわかってきました。
当時はまだまだ一般的な治療ではありませんでしたが最近は治験が行われたり開業医でも少しずつ治療を取り入れて検証がされてきています。
当院もこの低濃度アトロピン治療を始めます。
そもそも1%アトロピン点眼は本来子供の目の調節を完全に麻痺させ、
屈折検査を行い斜視弱視の治療に使われる一般的な点眼薬です。
この点眼薬が眼軸長の視覚制御にかかわる神経伝達機構に作用して
眼軸長の伸びを抑制できることがわかりました。(眼軸の伸展=近視の進行)
近年近視の子供が増加している台湾などでは一般的にされている治療です。
心配されるのは散瞳などの副作用(1~2週間瞳孔が開きっぱなし)でしたが、
100倍希釈と濃度が薄く問題になることはないようです。
こちらを1日に1回時間を決めて点眼してください。
学校で近視を指摘された小学生で特に両親が近視のお子様などが良い適応です。
眼軸伸展の予防ですから、中学生や高校生でなるべく近視を強くしたくない場合もお勧めいたします。
ですが眼鏡が外れるようなことはありませんので過度な期待には答えられません。
1本5cc(約100滴)で両目で50日分になります。
冷蔵庫での保存をお願い致します。
処方前後に眼圧、瞳孔の大きさ、眼軸などを検査いたします。
この治療の欠点は効果をなかなか実感できない点だと思います。
ですがお子さんの10年20年後を考えて無理のない範囲で治療を続けていくことをお勧めいたします。
近視
オルソケラトロジー
夜間睡眠中に特殊なハードコンタクトレンズを装着することにより、角膜を圧迫しカーブを変えることにより日中の近視を軽くする治療です。
レンズの断面を見て頂くと中央部が扁平になっています。
この部位で角膜を睡眠中に押すことによって角膜を凹レンズ化します。
以前は、中等度(-4.0D程度)の近視までの適応でしたが、最近のレンズは改良され以前より強い近視や乱視まで適応範囲が広がっているようです。また、これとは逆に角膜を凸レンズ化させ、遠視や老眼にも処方されるようです。
いろいろと新しい素材やレンズデザインの改良はあるとは思いますが、角膜を圧迫変形させる
という原理は同じだと思います。
すると、度数が上がればそれだけ角膜への負担は大きくなるでしょうし、1日の見え方の変動も大きくなると思われます。
宣伝で、視力1.0とか2.0になります。などと聞くと、近視が治るような嬉しい気分になりますよね。
実際視力も良く出るのでしょう。
ですが、視力というのは単に1.0出ていればそれで良いという単純なものではありません。
視力の質、というと漠然としていますが暗い所ではどう見えるのか、視力の変動が起こるとどうなるのか。
話は飛躍しますが、地震災害時は大丈夫なのか。
実際生活をしていきますといろいろな状況が有ります。是非急がすに考えてくださいね。
日本コンタクトレンズ学会のガイドラインはオルソの適応は20歳以上としていますが、ネットなどでは医師の裁量で小学校高学年辺りから処方している施設もありますね。
また、海外(特にアジア)では、近視の進行をある程度予防出来ると言われていました。真偽のほどは確証はされていませんでしたが、近年日本でも色々な施設からの報告で近視進行予防効果はあるようです。
今後の更なる報告に期待したいです。
レーシック
子どもにはしませんが、オルソとセットで聞かれるので.......
沢山の情報がありますので、詳しい方法や適応についてはここでは書きませんが、心に留めて頂きたいことは角膜を削ることによる屈折矯正ですから不可逆ということです。
成長段階の子どもは、屈折も安定していませんので適応外というのは言うまでもありませんが症例数の増加に伴い難症例も出てきたように、万能ではないのです。
術後角膜感染症は5000例に1件、アメリカでは術後不満の出る割合は5%とも言われています。
それにしても最近のネットの宣伝は凄いですね、ステルスマーケティングという言葉を最近耳にしますが、低価格、芸能人多数利用、成功率99%などという言葉だけで判断しないでくださいね。
それから、手術をすることを決めた方に知っておいて頂きたいことですが、レーシック後は角膜厚の変化と角膜コラーゲンを切開することによる角膜剛性の変化から眼圧値が低く出てしまいます。
ですので、手術前のベースラインは知っておいてください。
近視は緑内障が正視眼より合併しやすい事が知られています。
緑内障治療に必要な眼圧のベースラインを知っておくことは大切です。
今年も、花粉症の患者さんが「涙が出ます」とぼちぼち来院されてきました。
またあの時期の到来ですね。
1. 累進屈折力レンズ
これは、早い話が遠近両用眼鏡です。
えっ??子どもに?子どもがかけるのですか?
そうなんです。累進眼鏡によって近方を見るときに、凸レンズが加わるようにすることによって以前お話しした調節ラグを少なくするのです。
この抑制効果の初めての報告はLeungの1999年でした。
結果は-0.29Dとなかなかの結果でしたが、その後Shih2001年、COMET2004年こちらはアメリカで多施設の約500人の6~11歳の子どもを対象に+2.0D負荷の累進レンズ装用群と通常の単焦点レンズ装用群を3年間調査を行うクリニカルトライアルでした。
結果は-0.07D、その後も2008年Hasebe岡山大学、結果-0.11D、更にその後の報告のメタ解析を平均すると抑制効果は年間-0.14D、眼軸長は-0.05Dでした。
これらの結果より、臨床現場において実際推奨されるものではないと岡山大学の長谷部先生も言われています。
理論上効果を期待された累進屈折力眼鏡でしたが、残念ながらこのような結果から私は診療で子どもには勧めしていません。
累進眼鏡というのは、単焦点眼鏡よりお値段も高いですし、ましてや成長期でこまめに替えるには経済的負担もあると思います。
2. 低矯正眼鏡
1965年所先生の報告以来低矯正眼鏡は近視を抑制すると言われていました。
しかしChung2002年、Adler2006年これらの報告ではむしろ逆効果という残念な結果が出てしまいました。
原因は明らかになってはいませんが、網膜像がぼやけてしまうこと自体が眼軸伸展のトリガーになっている可能性もありますし、母親の立場から考えても、遠見時にぼやけてしまうため目を細めてしまう癖をつけるのは避けたいと思います。
以上のように、今のところ眼鏡による近視進行予防は確立されていません。
ただ、知っておいて頂きたいことは過矯正の眼鏡は近視を進行させる可能性が高いことです。
眼鏡をかけると近視が進むという誤解が昔からあります。
これは、違います。
適正なその子に合った眼鏡を処方してあげることが大切なのです。